背中
         
       
貴方の、背中が好き。
       
         
            
       
             
国を見る時、語る時。
貴方の背は、長きに渡り国を支えた自信に溢れ。
大樹のように揺るぎない、
大きくて靭い、背中が好き。
           
貴方が背を向けるのは、信頼の証だと誰かが言った。
そして貴方はこんな風に、私に平気で背を見せる。
無言で信を示してくれる、
穏やかで真摯な、背中が好き。
             
泣きたい時は、黙って背を貸してくれる。
私の涙が乾くまで。
その腕と同じくらいに優しく私を包む、
広くて暖かな、背中が好き。
            
私が機嫌を損ねても、何でもない振りをする。
頁を捲る手も、いつもと同じ。
でもほんの少しだけ丸くなる、
素直で可愛い、背中が好き。
          
            
だから、ねえ。
辛い時は背中で教えて。
こちらを向かなくてもいいから。
私の手は小さいけれど、
貴方をぎゅっと抱きしめてあげる。
        
        
        
          
「――どうした?」
振り向いて、貴方が問う。
貴方の背に見惚れていたのを、とうに背中で感じてたくせに。
こういう時の貴方は、少しだけ意地悪。
だから私も、澄まして返す。
「いいえ、何でも」
「そうか」
目を細めて微笑んで、また背を向ける。
私もまた頬杖ついて、優しい背中を見つめ続けた。
         
          
         
        
         
私は貴方の、背中が好き。
             
            

役者は背中で演技が出来なければ、と仰ったのは、かの市川雷蔵さま(ラブ!)でしたか。で、一番最初に浮かんだのが、「尚隆の背中」でした。何故?
ああっ、改めて読むとはーずーかーしー(汗) 書き始めた頃は私も純情だったのね!(爆)

         
         
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