聖しこの夜
       
       
臥牀の中、抱き寄せていた華奢な肢体に柔らかく囁いた。
「主上」
「・・・ん・・・?」
気だるい余韻を心地よく浮遊していた少女が、甘く応えを返す。
「メリークリスマス」
思いがけない言葉に、腕の中の少女が大きな瞳を見開いて、男を見上げてきた。
あまりに意外そうな表情のあどけなさに、笑みが零れる。
「今日は、クリスマスという日だと仰っていたでしょう?」
「よく覚えていたなあ」
少女の事ならば些細な事でも記憶する彼には、蓬莱の行事を覚えておくなど容易いことだ。
「本当は神様の誕生日に、家族と一緒にお祝いする日なんだって。キリスト教の御祝いの日で、神の誕生を祝う日だよ。蓬莱じゃすっかり本来の意味は薄れちゃって、恋人同士の祭日みたいになっちゃうんだけど・・・」
だから、この日に浩瀚と一緒にいられて嬉しいな、と歳相応の娘らしい表情で、照れ臭そうに笑う。
少女が残す無邪気さが愛しくて、艶やかな髪を何度も撫でる。
紅い絹に繰り返し口づけながら、異国の祝日に想いを馳せた。
         
        
天帝に支配されるこの世界では、宗教そのものに馴染みがない。
天の条理の枠のなかで、己の器にあった人生を営むだけだ。
         
己の力で運命を切り拓いてきた自分は祈る相手など持たないが、
彼女の故郷の神にならば、いくらでも感謝を捧げよう。
異郷に生れ落ちたこの少女を、16の歳まで守り給うたことに。
国と民とが望むままに、愛しい少女を返してくれたことに。
        
いや、違う。
自分もまた、この腕の中に居る美しい神に、祈りを捧げ続けているのだ。
『どうか、永遠に私の傍らに、この腕の中に居てください』と。
今の自分には、何者にも侵されぬ至高の存在を抱く心も、胸の裡に輝く暖かく眩い存在に祈りを捧げる感覚も、良く判る。唯一絶対の存在に身も心も全てを奉げ、その輝きを守る為ならば命など惜しくもないと思う自分は、信者どころか殉教者にさえなれるのかもしれない。
         
       
「こちらには宗教っていう観念は無いんだよね?」
小首を傾げて男を覗き込んだ少女に、明確な語調で返した。
「ええ、まあ。ですが、私は神を信じていますよ」
貴女という女神を。
         
「ふうん?」
意外だな、と少女は無邪気に笑う。
未だ自分が神だという実感に乏しい少女には、男の言葉の裏など思いも寄らないらしい。
甘く紅い唇に、誓いの口づけを捧げる。
密やかに祈りを捧げる男の唇は、甘い刺激となっていつしか少女の内の炎を呼び覚まし、もどかしげに喘ぐ唇の動きに誘われて、愛らしい唇に舌を差し入れた。
濡れた音と甘い吐息が、臥牀に満ちる。
ついばむような甘い口づけを交わしながら薄紅色に色づく熟れた桃を掌で大きく揉んでいると、乱れた吐息のなかから、少女が告げた。
「言い・・・忘れて・・・た・・・」
「え?」
思わず掌の動きを止めた男に、澄んだ微笑を浮かべて囁く。
         
「メリークリスマス」
         
男も柔らかく微笑むと、女神の誕生に感謝の意を示すかのように、額に恭しく口づけを贈る。
そのまま綺麗な鼻筋を唇で辿り、その果ての、蕩けそうな吐息を漏らす柔らかな唇に、深く絡みつくような口づけを贈った。
          
           
            

十八禁未満レベルってゆーと、これくらいかな?(笑)
クリスチャンの方に殴られそうなクリスマス話ですね・・・すごいプレゼントに相応しくない話です。反省。
忙しかったのでグレてるんだと、大目に見てやってください(爆)
尚陽と浩陽のギャップも、ついでに大目に見ていただけると有り難いです・・・うちの閣下って一体・・・こっそり書き直すかな(^_^;)

         
         
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