「わぁ・・・・・・星が近い!」
草の上に寝転んだまましなやかな腕を伸ばし、掌をいっぱいに広げて陽子が言った。
情事の後とは思えぬ無邪気な様子に、男が顔を綻ばせる。
「肩を冷やしては風邪を引きますよ」
剥き出しになった裸の肩を衣でやさしく包みながら、華奢な体を抱き寄せた。ぴったり寄り添いあう肌の感触に羞じらう素振りを見せる少女の初々しさに、愛しさが募る。
一枚の衣に二人でくるまりながら、照れ臭そうに少女が言った。
「星を見ると、つい癖で流れ星を探しちゃうんだ」
「流れ星?」
「うん。隕石とか星の欠片が動くのがね、流れてるように見えるから。消えるまでに3回繰り返して願い事を言うと、願いが叶うって言ってた」
娘らしい素朴な言葉に、男は穏やかに微笑んだ。
「もしこちらにも流れ星があったら、主上も何か御願いごとをされるのですか?」
「うん」
えへへ、と照れ笑いしながら少女が答える。ふと興味を覚えて、
「それは、どのような?」
そう訊いてみると、
「内緒。口に出しちゃうと叶わないっていうから」
という澄まし顔での答えが返ってきた。
少女は男に覆い被さると、可愛らしく小首を傾げて男の顔を上から覗き込んできて、
「浩瀚も、流れ星があったら願い事する?」
と問いかけた。愛しい重みと髪の感触を心地よく感じながら、
「そうですね、私でしたら」
さらりと願いを言いかけた男の口を、少女がぱくっと掌で塞ぐ。
「もう。言っちゃうと叶わないんだって」
言い聞かせるような口調に、細い指に軽く口づけを贈って掌を外し、穏やかな口調で告げた。
「そのような心配はございませんよ。口に出した方が叶う願いもあるでしょう」
疑わしげに男の顔を覗く視線に苦笑し、
「そうですね、例えば・・・・・・」
と、考え込む振りなどして。
「なに?」
「――ああ、では、私の願いで試してみましょうか」
個人的な望みをあまり口にしない男が出した珍しい提案に、少女が目を輝かせて頷いた。
「私の願いは」
言いながら、体を入れ換え抱き寄せて、体を掌でゆったりと撫ではじめる。
「今一度、貴女のこの滑らかな肌に触れて」
「こ、浩瀚?」
驚きの声に素知らぬ振りをして、熱くなった耳にそっと口づける。体を解す時のような少し力の込められた愛撫に、少女が気持ちよさげに吐息を漏らす。掌が敏感な場所を選んで攻めだすに及び、吐息に甘いものが混じりはじめた。
「この甘い吐息に包まれて」
吐息を飲み込むかのように間近に顔を寄せたまま、自分の知る敏感な箇所を掌と指で責めたてる。
「ん・・・もう、ば、ばかっ・・・」
「貴女の淫らな御声を聞いて」
手を休めずに喉に舌を這わせ、敏感な首筋を舐め上げる。
「ああんっ」
「この綺麗な桃を食して」
衣のなかに頭を入れて、横たわっても形の崩れない美しい胸と、その愛らしい頂を口に含み、揉みしだいて指で弄る。
「ああ・・・あ、あん・・・はあ・・・」
ひとしきり柔らかで張りのある食感を愉しんだ後、衣から頭を抜くと、濡れて輝く紅い唇に口づけた。
太腿の間に手を這わせ、引き締まった内股をするすると下から上へ何度も撫でる。数度目に、再び濡れ始めた秘所の入口を、指でつんとつついた。
「あっ!」
「この場所に長く留まっていたいということなのですが」
言葉を切って、見事な星空を見上げる。
満天の星空に向って、よく透る声で穏やかに告げた。
「――このささやかな願いを、聞き届けていただけるでしょうか?」
「・・・ずるいぞ」
――『お願い』してるのは『星』にじゃないだろう。
そう言いたげに拗ねる愛らしい口調にくすりと笑みを漏らし、
「如何でしょう?」
言葉とともに、祈願の結果を待つかのように、神妙な振りをして手を休めた。
「ずるいよ、もう・・・・・・断れない状態にしてから・・・言うなんて」
甘く荒い吐息混じりに返ってきた、蕩けるような天の声。
男は少女を覗き込み、
「ほら、口に出したら叶ったでしょう」
鼻が触れあうぎりぎりまで顔を寄せて、甘く囁いた。
少女が頬を膨らませ、太腿を締めて男の手をぎゅっと挟み込む。
なんとも可愛らしい抵抗ににっこりと微笑みかけて。
鼻の頭に軽く口づけると、
ぐっと力を入れて一気に手を滑らせた。
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