月桂
         
          
         
ほのかに薫る、甘い香り。
彼の人の肌のように、
柔らかで暖かく、心安らぐその香り。
生で飲むには甘過ぎるが、
女王の唇越しに味わえば、
口に程好い甘さとなる。
           
月に咲くと言う、黄金の花。
夜闇に鮮やかに浮かぶその姿は、ふっくらと愛らしく。
白い胸の頂を鮮やかに彩る、紅い蕾を想わせる。
甘い香りと愛らしい姿に魅了され、
咲き零れる花の下、静かに佇む男がひとり。
          
       
           
愛しい気配が傍らに立ち、ふいに香りが強さを増す。
       
     
佇む男を妨げぬよう、そっと差し出された玻璃の器。
彼の器には、男の好む酒が注がれており、
彼女の器には、黄金の蜜の酒。
暖かな心遣いに一礼を返し、
           
かつん
            
玻璃の重なる音を、涼やかに響かせた。
          
               
            
強い酒を一気に飲み干し、優しい手から玻璃を取る。
月の光に輝く玻璃を、桂の根元にそっと置き、
小首を傾げる女王へ、涼やかな微笑を返した。
             
手を伸ばして華奢な腰を軽く引き寄せ、
頤を持ち上げる。
          
          
甘い酒に潤んで煌く、新緑の瞳、珊瑚の唇。
柔らかな舌に絡まる金の蜜を味わうために、
深く唇を重ねあわせた。
       
             

『棕櫚の庭園』様の「お酒と陽子さんをいただこう」参加品。いろんな酩酊っぷりが出てきてとても素敵!今後の展開もとても楽しみなのです。
         
         
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