「寸止め!?」と追求された(笑)陽子攻め系誘受・「誘引」フルバージョン、「万誘引力」です。
これは「誘引」の寸止め解除バージョンですが、裏部屋に女王様ノリノリのフルバージョンがございます。大部分が同じ話になりますので、裏話が平気な方は、直接そちらを御覧下さいませ♪

万誘引力 Level 2 version
(『誘引』full version)
        
        
王宮中がとうに寝静まった刻限。
          
まだ灯りの消えない王の執務室が気になって声をかけてみた浩瀚は、壁に凭れて床に座り込んでいる王の姿を発見して、凍りついた。
「主上!?」
いつも冷静な彼には珍しく、慌てて主に駆け寄る。肩を軽く揺すると華奢な身体がぐらりと傾ぐ。
(やはり、酷く御疲れだったのだ・・・・・・)
御身を大切にしてほしいと周り一同が常々言ってはいるのだが、真摯な少女はつい無理を重ねてしまう。心配げに顔を曇らせた浩瀚は、
「失礼を」
律儀に一声かけて軽い身体を抱き上げた。
           
痕医よりまず落ち着ける所に寝かせることが先決と、回廊を渡り、出来る限り揺らさぬように心配りながら、王の私室に玉体を運ぶ。
        
そして。
          
祥瓊の心尽くしの香が漂う、女王の臥室に足を踏み入れた瞬間。
慣れた香を嗅いで思考が落ち着いたのか、女王の寝息の不自然さに気がついた。
溜息をつきながら、そっと言う。
「・・・・・・起きていらっしゃいますか」
それは質問ではなく、確認。
「ごめん。・・・浩瀚が入ってきた時は、本当にうとうとしてたんだ・・・。運んでくれて、ありがとう」
とろりとした瞳と少しだけ眠たげな声が年相応のあどけなさを感じさせて、大層可愛らしい。上目遣いに謝罪をしてくる主に、優しく笑いかけた。
「いえ、大事が無くて良うございました」
浩瀚の笑顔に、陽子もほっとしたように笑いながら言った。
「それにしても、よく判ったな」
「いつもと違いましたので」
素直に感心する陽子の声音に、浩瀚がぽろりと本音を漏らす。
        
         
一瞬の空白があり――すっと空気が変わった。
         
         
「・・・・・・他の者だったら、そのまま眠ってしまうつもりだったんだが」
何が、とは言わない男の応えに陽子が笑顔の艶を変え、肩を揺らし、声を殺して笑いを漏らした。
先程の眠たげな様子は、もう見られない。
「私なら、どうされると?」
臥牀に主を降ろしながら戯れにそう問うと、間近から翠の瞳が覗き込む。浩瀚は、翠玉の艶やかな輝きに、ふと漏らした一言が思いがけず大きな波紋を呼んだのを悟った。
だが・・・・・・。
「さて?」
――それは、お前の方が良く知っていることだろう?
口には出されない王の言葉が、脳裏に響く。
是、と答えそうになって、ありったけの精神力で以って踏みとどまった。いくら明日が休日だからといって、ここ暫く激務が続いた女王の身体に過大な負担をかける訳にいかない。あと2日もこの調子が続けば、彼女は体調を崩してしまいそうだったのだ。
「主上。私はこれにて、失礼致します」
知らず知らずに戯れを仕掛けてしまった事を後悔し、女王から目を逸らそうと背を向けた。扉のところで振り返り、女王の姿を見ないようにしながら頭を下げて拱手する。
「明日は朝議もございませんし・・・ごゆっくり御休みくださいませ」
挨拶をし、退出しようとした彼の背を、深く豊かな女王の声が、とん と叩いた。
「お疲れ様――浩瀚」
          
         
         
         
労いの言葉に続く、僅かに強められた男の名。
それは、政務の終わりの合図。――ただの、男と女に戻る時を告げる合図。
         
          
声の磁力に囚われて思わず振り返り、振り返ったことを後悔した。
少女はしどけなく横たわり、腕で体を支え上半身を起こしてこちらを見つめていた。
はだけられた官服から覗く綺麗な鎖骨。首から滑らかに続く肩の線、引き締まった腕。
身体のしなやかさを思わせる軽くそらされた背に、きゅっとくびれた腰。
官服越しでも判る脚の線の美しさ。――あまりに強過ぎる、誘惑。
楽しげな光がちらつく瞳の毅さは、抗えない魔力を秘めていて。
            
魅入られて立ち尽くす浩瀚を見つめながら、半身を起こしたままで、女王は長い髪を纏めていた布を静かに解く。縛りを失った髪が柔らかに落ち、華奢な肩を覆ってさらりと揺れた。浩瀚が、黒い絹と紅い髪の、鮮やかなコントラストに息を呑む。
女王が手に持った布をぴん、と指で弾くと、薄い布がふわりと舞って床に落ち、――微かな筈のその音が、やけに大きく響いた気がした。
        
         
          
          
そんな風に、まるで何てこと無いモノのように、
自分の身体を投げ出して。
その存在は、天空に輝く太陽と等しく価値あるものだと、
知っているくせに。
天女を腕に封じ込める誘惑に此の男が抗える筈が無いと、
知っているくせに。
女王の体を気遣うからこそ、
無理やり理性でねじ伏せようとしたものを・・・・・・。
       
男の想いを知り尽くして尚、
そうして誘いをかけるのか。
         
          
――酷い方だ――
         
僅かに動かした浩瀚の唇を読み取り、くすくすと楽しそうな笑いを返す。
せめてもの抵抗で、扉から動かず溜息をついてみせた。
「随分とお疲れのように、お見受け致しますが?」
「今更だ。・・・・・・少しくらい疲れが増しても、同じことだと思わない?」
一拍おいて、さり気ない調子で言葉を継ぐ。
「浩瀚は?疲れたか」
――女王の問に、男は深く深く息を吸った。
          
            
ゆっくりと臥牀に歩み寄る。
「私は・・・・・・夜更かしは慣れておりますので」
鼓動の音は徐々に高くなっても、声音はあくまでも、涼やかに。
            
それは、最初から明らかな結末に向って進む、予定調和の駆け引き。
            
女王は頬杖をついて男を見上げると、愛らしく首を傾げた。
「夜更かし?」
仕草の無邪気さとは裏腹に、嫣然と笑って問いかけてくる。
浩瀚は、殊更ゆっくりと歩み寄りながらも、圧倒的な瞳の引力に抗えない。
              
「それとも」
彼の言葉に、女王は無言のまま、視線で続きを促した。
細い指に挟まれて揺れる緋色の髪が、枕元の灯りに照らされて艶やかに煌く。紅い唇に寄せられる毛先の、その濡れたような輝きが、露に濡れた花園を守る緋色の叢を連想させた。
これ以上ない誘惑に、跳ね上がった鼓動が強く鼓膜を叩く。
「徹夜は慣れている と、申し上げるべきなのでしょうか?」
「さて・・・・・・」
僅かに伏せられた長い睫毛が、滑らかな頬に影を落とす。毅く澄んだ女王の瞳で、傍に立つ浩瀚を見下ろすように微笑む。きりりと持ち上げられた口の端が、却って酷く扇情的に見えた。
             
            
            
微かな衣擦れの音だけをさせて、浩瀚は静かに錦の布団に腰を下ろした。
真っ直ぐ見上げてくる瞳に吸い込まれるかのように、肩を抱き顔を寄せる。
             
触れあうぎりぎりまで唇を寄せても。
女王は誘惑の言葉を、決して口にしない。
だが、それがどれ程のことか。
彼女の瞳は、言葉より余程雄弁なのだから。
この世で最も強い引力を持つのだから。
          
          
まずは、軽く口づけを贈る。
女王が男の首筋に腕を絡めて引き寄せる。
襟を解くと、形の良い頤を仰け反らせた。天へ飛び立つ朱雀のような、しなやかで美しいラインを描く背を掻き抱き、翼の付け根を撫で摩る。
鎖骨の窪みをきつく吸うと、女王はさらに大きく背を反らし、大輪の華が綻ぶように、幸せそうに艶やかに笑った。
             
誇り高く美しい彼の女神は、
身体を男の下に投げ出しても、心は容易く男を組み伏せる。
いつだって、驚かされ翻弄されるのは男の方。
その望みを叶えようとあがくのは、男の方だ。
             
だが、だからこそ惹かれるのだと思う自分が居る。
交わりを想起させる程強く舌を絡めあい、互いに吐息を注ぎ込む。
浩瀚は、女王の望みを叶えるために、襟に手をかけ一気に上衣を剥ぎ取った。
            
            
            
            
          
              
肩を剥き出しにされた女王が、男の手首を掴む。
悪戯めいた微笑を浮かべ、男の手に自分の小さな手を重ねて、男の襟元に持っていった。上衣を脱がせ、軽い口づけを与える。――男はそのまま小さな頭を引き寄せ、深く熱く、甘い唇を貪った。互いの呼吸音が、徐々に高くなっていく。
舌を絡めたまま下着を脱がせあうと、無駄な肉の無い美しい二体の裸体が、月の光に浮かび上がった。
             
形の良い胸に手をやると、とうに固く張り詰めている膨らみが、しっとりと掌に吸いついてくる。
攻めやすいよう背後に回りこみ、片手で胸を揉みしだきながら、口づけだけで既に熱く潤っていた秘所に手を伸ばす。赤く勃起した花芽を激しく擦り、愛液を滴らせる蜜壺に、指を差し入れる。男の動きに呼応するかのように、女王が男の剣に手を伸ばした。
「うっ・・・・・・」
互いの、小さな呻きが重なる。
           
           
緊張が緩んだ途端に、暫くなりを潜めていた欲情と熱が沸騰したのか、今宵の女王はいつになく激しく、快感に深く耽溺している。始めは羞しげに小さな声を漏らす唇が、今宵は喘ぎを抑える気配もなく、思うままによがり声をあげる。
首筋に口づけると、艶やかな髪を掻きあげて、『もっと欲しい』と男を誘う。浩瀚は、彼女の望むままに、細い首筋に口づけを繰り返し、何度も何度も舐め上げた。
              
今は、男の剣を握っている手。
男の剣を手にしなる腕、首筋に輝く汗の珠、野生動物のように鋭く翻る肢体――それは、剣を取り闘う姿を想起させる。命燃やして闘うとき、最も鮮烈な輝きを放つ彼の女神。圧倒的な生命力と躍動に溢れる、野生の美。
今の自分と同じように、兵士達も、全身で闘う女王を熱く見つめていることを知っている。自分もまた、彼女を取り巻く男の一人に過ぎないのだと否応なく知らしめるような、男達の熱い視線が辛くて、いつも、鍛錬に励む姿を遠くから密かに見つめるだけだ。
          
          
辛い記憶を打ち消すかのように、柔らかな襞の敏感な場所を何度も強く擦り、胸の蕾や固い花芽を激しく揉みしだく。
「あっあああ・・・っ!も、もう・・・」
蜜壺が強く収縮し、指に絡みついていた襞が、絞り込むような複雑な動きをみせ始めた。頂きに肉迫しているのを感じ取り、手と唇の動きをさらに激しく熱くする。
「んううっ、浩か・・・も、いく・・・ああああっ!」
堪えきれずに鋭く叫ぶと、全身を激しく痙攣させる。剣を握る手が硬直し、強い力で締めつけてきたが、渾身の自制で放出を堪えた。
              
             
              
何度か大きく息をつき、女王が褥に手をついた。
ついた手を更に前方に動かすと、猫科の獣のように、しなやかに肢体を伸ばす。
浩瀚に向って突き出される極めたばかりの蜜壺は、今も収縮を繰り返し、花弁が喘ぐたびに熱い蜜が滴り落ちて、男の剣を誘う。誘われた剣は大きく脈打ち、先端から露を零した。
獣の姿勢をとった女王の、僅かに反らされた背が描く線の美しさに、息を呑む。
酷く淫らで獣じみた姿勢の筈なのに、孤高の野生動物にも似た気高さを纏う、女王の体。まるで、真摯で清冽な魂の輝きを、男に見せつけるかのように。
――女王が振り返って、誇らかに艶やかに笑んだ。
             
濡れて艶めき、勁く輝く、翠の瞳。
底知れぬ海のような、深く澄んだ彩。
           
全ての男を惹き寄せる、強烈な引力だ。彼でなくとも、この誘惑には抗えないに違いない。
引かれるままに蜜壺に長剣を寄せると、先端がつるりと呑み込まれ、くちゅりと淫らな水音をたてる。敏感な先端を熱い蜜で包まれ、浩瀚の腰がびくりと震えた。
息を整え、至高の存在に祈りを奉げるような心持ちで、剣を思い切り突きたてる。
「あああっ!」
女王が待ち望んでいた灼熱の充足。
脊髄から脳天まで駆け上がった目も眩むような快感に、しなやかに激しくその背を仰け反らせた。
           
          
          
           
天を仰ぎ、男剣で串刺しにされたまま、激しく自由に踊る女王。その女王を背後からきつく抱き締める自分に、男の胸の裡で冷たい塊が膨らんでいく。
           
至高の女神と同じ目線には、立てない自分。
遥か高みを目指すその背を、常に愛しく眺めながらも、
隣に立つことは叶わない。
          
空翔けようとする女神の背を、
縋りつくように抱きしめて。
その腰を、地面にきつく縫いとめて。
            
そんな自分には、
この体位が似合いなのかもしれないと。
熱に浮かされた頭で、そう思った。
           
           
激しく悶える女王の姿に、愛しさが沸騰する。
同時に、凍れる思考に、侵される。
この熱でさえ、己の裡に巣食う氷を解かせない。
だが、氷もまた、この熱を冷ます事は叶わない。
         
熱と氷。
            
せめぎ合いぶつかり合う二つの奔流が、出口を求めて、男の裡で荒れ狂う。
唇を滑らせて細い首を舐め下ろし、己の葛藤を刻み込むように――空飛べぬ呪いを掛けるかのように、綺麗な鎖骨に紅い印を刻み込んだ。
          
          
男の嘆きを感じ取ったか。
女神が男の頭をきつく抱く。
男には見えない位置にある、至高の女神の滑らかな頬を。
澄んだ涙の珠が一粒、静かに滑り落ちた。
            
           
            
         
          
           
              
少女が、気だるげに腕を持ち上げて、男の髪をさらりと梳いた。
             
「何を・・・考えてた・・・?」
ぎくりとした。
言い抜けようかと思ったが、聡い少女には通じまい。
浩瀚は、渦巻いた想いの中から、情事の後にふさわしい部分だけ取り出して、口の端に乗せた。
「私には――私達には、どの・・・体勢が、似合うのかと」
             
「体勢・・・?」
彼らしい言葉遣いが可笑しかったのか、くすくす笑う。真赤になって戸惑うかと思ったが、意外にも真面目な顔になって言った。
「私は半分獣みたいなものだから、私に『似合う』っていえば、後背位、なのかな」
魑魅魍魎が跋扈する宮廷で、いつまでも『人間らしく』在れるこの人が?
いくら皆でその心身をお守り申し上げているとはいえ、本人の努力なくして清廉なままでは居られまいに。そんなことはないと言いたかったが、女王の言葉は確信に裏打ちされたかのような重みを孕んでおり、安易に否定してはいけない気がした。
「貴女が・・・?何故、そのような」
その問には答えずに、陽子は静かに言った。
「今も本質は変わってないと思うよ。・・・・・・きっと、獣の部分が、本能に戻った時に目を覚ますんだと思う」
「・・・・・・・・・」
先ほどの、野生動物のように這った孤高の女王が、男の脳裏に蘇った。
だが。
「あなたの獣の部分も・・・とても気高く美しいと、私は思います」
浩瀚の言葉に、陽子は澄んだ微笑を浮かべた。
          
            
しなやかで、気高く美しかった、その姿。
とても綺麗で、その輝きは眩し過ぎて。
誰にも従わない、誰にも捕らえられない野生の獣。
この存在は誰のものにもなりきれないのだという真実を、
見せつけられるようで――少し辛いけれど。
              
             
浩瀚の髪を弄びながら、陽子が言った。
「私は浩瀚に抱きしめてもらうことが好きだから、どんな体位でもいいんだけど」
そして、ふと思いついたように、傍らに横たわる浩瀚に抱きつくと、えいっと寝返りをうつようにして、浩瀚が自分に覆い被さるような形にした。
「しゅ、主上?」
「でも、ね」
浩瀚の背中を抱き寄せ、軽く唇に触れてやわらかに笑った。
「こうやってキスして抱き合えるから、これが好きかな」
           
こんな時でさえ曇りない、闇を照らす笑顔。
胸の奥にふわりと舞い降りてくる、暖かな言葉。
            
男も笑みを返したが、それは、少しだけ泣き笑いに似ていたかもしれない。
             
             
              
今度は、浩瀚から甘く口づけを贈った。
唇の誘いに陽子は素直に従い、唇が離れると、囁くような笑い声が静かな臥牀に響く。胸に顔を埋めて優しく掌で全体を揉みながら、蕾を舌で転がす。
「・・・ん・・・」
笑い声がやみ、かすかな喘ぎがもれるにつれ、蕾が固く膨らみはじめた。桃色に染まった胸を舐めながら、腰やすらりと引き締まった脚をゆったりと撫で回し、秘所を優しく刺激する。
甘い肌に耽溺していた浩瀚は、やけに静かな陽子の様子に気づき、ふと手を止めた。陽子を仰ぎ見て、脱力し、思わず声を漏らす。
            
「主上――・・・」
少女は、実に安らかな幸せそうな顔で、眠っていた。
             
           
夜更かし程度で足りるのか、と――夜通し愛し合わなければ、お前は満足出来ないのではないかと――挑発したのは、女王の方ではなかったか?
           
             
浩瀚は苦笑して、起さないようそっと陽子の身体から身を起こし、傍らに寄り添った。頬を微かに、優しく撫でながら囁く。
「ですから、お疲れでは、と申し上げたでしょう・・・?」
無意識に陽子が浩瀚の手を取り、甘えるように身体に巻きついてくる。
柔らかな身体の感触に、浩瀚の剣が大きく脈打ったが、この愛らしい寝顔を見ては、陽子を起すことなど今の浩瀚に出来はしない。汗に濡れて輝く緋色の髪に口づけ頬を寄せて、愛の言葉を囁くかのように、そっと告げた。
愛しさの滲む、深く暖かな声音で。
           
「本当に、酷い方だ――・・・」
そして、何より愛しいひと。
         
           
常に心身ともに酷使している女王の事、
愛撫の途中で眠られてしまったのは、初めてではない。
その度に女王は、目覚めた後、実に正直に蒼ざめて、
「浩瀚の手とキスって、優しくてすごく心地良いんだもの・・・だから、ふわふわ身体が浮いてるみたいな気分になって、いつの間にか、そのまま・・・・・・」
懸命に言い募る。そして浩瀚の顔をおずおずと覗き込みながら、
「あの・・・ごめんなさい」
そう、小さな声で謝るのだ。
その様子があまりに可愛らしくて愛しくて、何度やられても怒れない。
また明日も、女王は同じ言葉を告げるのだろう。
そしておそらく自分も、いつものように、苦笑しながら赦してしまうのだ。
          
             
ああ。
「やはり貴女には、敵わない」
浩瀚は、女王を胸に抱いたまま、帳の隙間から覗く銀の月を見上げた。
              
             
           
           
             
かつて女王が教えてくれた、彼女の故郷の星々のように。
彼女を取り巻く我々は、この腕に眠る太陽を巡る、惑星なのだろう。
             
この太陽の引力は、とても強くて。
放たれる光輝は、あまりに眩く美しくて。
あらゆるものを引きつけてしまう。
             
彼女と引き合うのは自分だけではなく、
彼女と縁ある全ての者が、その引力に引かれて周りを巡っているけれど。
最も重い恋情を抱える自分が、最も強く引かれあう存在でありたいと。
最も近い軌道を巡るのは、常に自分でありたいと。
そう、強く願う。
             
そして、この月のように。
厳しい道を往く此のひとを、
優しく照らす存在でありたい。
            
            
           
          
              
眠る陽子の寝顔に目を戻す。
月光に浮かび上がる、あどけない幸せそうな寝顔。
彼女は、寝顔を見られるのは羞しいと言うけれど。
「代わりに、朝まで眺めさせていただきましょう」
優しく囁いて間近まで顔を寄せ、左胸の下――陽子の心臓の上に手をあてる。
鼓動は命の音だ、と。
とても暖かい音なのだと、彼に教えたのもまた、陽子だった。
          
           
             
陽子の寝息と鼓動、心地よい香の馨りに包まれて。
いつの間にか浩瀚もまた、
愛しい寝顔を見つめながら、眠りに落ちていった。
            
            
               
二つの穏やかな寝息が、臥牀に満ちてゆく。
抱き合って静かに眠る二人の姿を、
女王を見つめる男のように、丸い月が優しく眺め。
銀の紗のような其の光で、二人を柔らかく包んでくれた。
          
            
            

これが、2003年お年玉です〜って、どんなサイトだ(笑)!つーか、これが「一年の計」になるアタクシの2003年はどこへ行くんだ!?(爆笑)
えーと・・・裏部屋にあるのがフルバージョンなのですが、スケジュールの関係からこれをお年玉(笑)としてアップすることになり、急遽裏は苦手・・・と仰る方向けに、表用のレベル2バージョンを編集しました。何のレベルってそれは、その・・・ナニの(殴打)
これなら、普通よりちょっとだけ色が濃い話に見えますでしょう?うふv
         ↑見えないって・・・。
         
         
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